ゲーム基板を自己修理
ゲーム基板を起動したけど調子が悪いとか、画像が何かヘン!という時があります。特に久しぶりに
基板を起動した場合にちょくちょく起こります。原因は単なる接触不良だったり、本当に部品が死んで
いたり色々です。その様な場合は不具合箇所を修理する必要があるのですが、ゲーム基板の修理は
IC回路の知識やら測定器が必要になりますし、修理工具の扱いも慣れていないと余計に被害を広げ
たりします。それに、もし不良箇所の見当をつけて自分で修理したとしても、部品の発注などで完治す
るまでにかかった合計金額を考えると、結局修理に出した方が安かった、と言う事もありえます。かく
言う主催者も幾度と無く修理に出しています。修理はプロの業者に任せた方が無難です。
しかし実際に修理に出す際には、ある程度不具合内容を確認する必要があります。電源やハーネスの
不調だったとか、接触が悪かっただけでは労力の無駄ですからね。で、確認時に”もしかしたら直るか
も知れないぞ”と血迷い、半ばヤケクソで自己修理した例がここの記載です。参考になれば幸いです。
日物 麻雀セーラーウォーズを修理
この基板は”不具合品だけど良かったら差し上げます”と言われて譲り受けたもの。起動すると特
に問題も無く動作。おっ良品では?思ったのも束の間、しばらくすると画像がバグっていました。
しかしながらゲーム自体は問題なく動いている様ですし、画像がバグるタイミング等も特に決まって
いない様でした。そこでゲームを起動させたまま、ドライバーのケツでICをコツコツ叩く事にしました。
すると一定の方角を叩くと画像がバグり易い事が分かりました。そこから先は範囲を決めて弱い力
でコツコツ振動を与え、怪しい部分を絞り込んでいきます。
すると・・・。QFP型の大きなIC(四方に足の出た正方形の大きなIC)を叩くと画像がバグる事が判明。
ICの半田部分を良く見てみると、半田の量にムラがあります。本来全ての足の半田量は一定で無け
ればなりません。まあ、基板が生産された当初は少ない半田でも接続されていたが、年月が経つに
つれてはがれてきた、と言うことでしょう。
原因が分かったので早速半田付けです。こう言うICは足を一本ずつ半田付けするよりも、まとめて
付けた方が早いし、基板に対する負担も少ないと思います。
①まずは一気にドバッと半田を付けてICとパターンにしっかり馴染ませます。
②次に半田ゴテを使い、余分な半田を取り除きます。コテで余分な半田を取る
事により、基板のパターンに適度な半田が残ります。(コツが必要です)
③念のためスポットヒーターを当てて綺麗に馴染ませます。こうすると目に見え
ない様な細い半田タッチが取れます。最後に綺麗に洗います。
直りました。こういう基板は修理に出すよりも、買いなおした方が安いと思われますので
もし自己修理して失敗してもリスクは無い様な物です。
SNK ジョイフルロードを修理
この基板は久しぶりに起動したら動かなくなっていた、と言うパターンです。症状は立ち上がらず。
電源を入れたまま基板を持ち上げたりすると、モニター画面が一瞬チラつきます。最初はハーネス
の不良かと思いましたが、特に悪いところは無さそうです。そこで念のために基板上で電源電圧を
測ってみると、ハーネス付近ではきちんと5Vの電圧がありますが、基板の端では0Vです。基板を良
く見てみると、各ICへの電源供給は基板の端に刺さっている黄色い帯状のパーツで行っています。
基板がたわむ事により、帯状パーツの足の根元が断裂、電源が供給されていなかったのでした。
下の写真が帯状パーツです。1985年ごろまでの基板に使われている事があります。最初は断裂した
根元で半田で接続しましたが、このパーツは半田の乗りが極めて悪く、しっかり接続されません。
最初は良くても、しばらくすると取れています。しかもだんだん断裂箇所が広がってきました。
そこで思い切って全て取り去ってしまい、配線しなおす事にしました。
修理法ですが、要はリード線でも使って電源ラインを繋げばいいのです。元の帯状パーツは
電源ラインに入るパスコンの役割も果たしていると思われますので、必要に応じて後で積層
セラミックコンデンサでも付けておけばいいでしょう・・・。しかし!ここはひとつ、元のスタイル
に良く似た格好になる様に考えて見ます。方法は色々考えましたが、銅か真鍮の細長い板金
を作って引っ付ければそれなりに似た感じになりそうです。しかし、銅板やら真鍮板は価格も
高いですし、細く切るのも面倒です。そこでそこらに転がっていたケーブル(VVFケーブル)の
切れっ端から芯線を取り出し、圧延ローラーをかけて帯状パーツを作って見ます。
圧延ローラー・・・。中々良いスチームパンク系デザインと思います。(コーナーが違う)
帯状の板金が準備できましたので基板に取り付けます。まず基板に0.8mmの錫メッキ線を取り
付け、そこに作った板金を半田付けします。5VとGNDの両方が互い違いに基板から出ています。
5VとGNDの両方を取り付けました。このままではショートしてしまいますから、ビニルテープで2つの
板金の間を絶縁します。その後、オリジナルに良く似た色の紙テープを外側に貼り付けて完成です。
5Vのショートが無いか良く確認してから電源を入れます。画像が出れば修理完了です。この基板は
映像出力がかなり弱く、モニターのR、G、Bのゲインをほぼフルにして普通の基板並みに映りました。
ゲーム自体はツインレバー使用でかなり個性的なものです。画面は強制スクロールします。その中の
範囲で加速、減速をしながら車から手を出し、アイテムを取りながら自宅までドライブします。全8面。
8面をクリアするとどうなるのかと思いましたが、5面からのループでした。
ジャレコ モモコ120%を修理
この基板は液晶モニターのコーナーでも紹介している通り、同期が特殊でナナオのモニターでも
うまく映りません。元からこの様な仕様なので本来故障ではないのですが、これでは使い勝手が
悪いので、何とかナナオのモニターに映せないかと考えてみました。写真はナナオの25インチ
ブラウン管モニターに映したところです。画面を見ると水平同期が追従できていない感じです。
映る様に考えると言いましても、主催者は測定器は持っていないし、映像信号についてもあまり
分かりません。簡単な工夫をしてみる程度です。JAMMAの同期信号出力から逆にたどってみると
写真の小さい方の基板にたどり着きました。信号は基板中ほどのLS08に繋がっています。LS08
はANDゲートです。ここで何か信号がミックスされている感じです。
そこでミックスされる前の回路の片方にHC14でディレイを適当に作り回路に入れてみました。
すると適当に作ったにもかかわらず、うまく表示されました。ナナオのモニターの許容範囲を
わずかにオーバーしていただけの様です。ディレイのタイミングをもっと追い込めば更に安定
出来るかもしれませんが、うまく映っているのでもうこのままいきます。ナナオのモニターでも
25インチよりは18とか14インチの方が同期の追従範囲は広かったと思います。基板に手を
入れ無くても、LM1881の回路を入れるだけでうまく映る場合もある様です。
コナミ グラディウスを修理
この基板は普通に立ち上がり、プレイも出来るのですが1時間ほど動作させると背景のスプライト
(流星)が止まってしまいます。下の写真がその時の物ですが、地形がスクロールしても星の一部
が止まっているのが分かると思います。その内に全ての星のスクロールが止まってしまいます。
この症状は基板購入時からのものでした。すぐ購入したショップに連絡しましたが、返答はありません
でした。主催者からも一度連絡したきり、もう問い合わせはしませんでした。しかし、その後一ヶ月ほど
経過してからショップから連絡がありました。ショップの返答は、”技術担当がアジアに出張しており、
修理対応は出来ない。ICを74HCタイプにする等の対応策が考えられるが、他の詳しい所に当たって
見てくれ。不具合品だが大事にしてくれ”との事でした。こちらからの返答は当然しませんでした。
修理の続きですが、スプライトのスクロールが止まっていても、プレイは続行出来ますし、3時間程度
電源を切ってから再度立ち上げると、普通にスクロールします。(やはりその後止まってしまいますが)
ゲームのプレイに支障はありませんので、不具合はビデオ関係と思われます。グラディウスは2枚基板
ですが、ビデオ関係は下基板と言われています。そこで下基板を見てみると何やら手が入っています。
ジャンパー線等は無いのですが、やたらICソケット化されています。特にS-RAMの周りは顕著で16個
のS-RAMが並んでいるのですが、その内10個がソケットになっています。しかも使われているソケット
の形が丸ピンタイプだったり、板バネタイプだったりで統一されておらず、基板の美観を損ねています。
とりあえずソケットになっているS-RAMを適当に入れ替えて様子を見てみました。すると背景が流れ
始めました。しかし良く見ると今度はスコア表示がチラチラバグっています。これではダメです。S-RAM
が原因とは言い切れませんが、この際思い切って全部のS-RAMを交換する事にしました。過去の
修理時に交換されたS-RAMはメーカーや速度がバラバラ、更にICソケットも気に入らないためです。
S-RAMの部分に手を入れるとなると、どうするか悩むのがICソケットです。ICソケットを全部やめた
方がオリジナルの姿に近くなります。考えた結果、16個全てのS-RAMを同じデザインのICソケット
(板バネタイプ)に揃える事にしました。下がその時の写真です。見苦しさは軽減されていると思います。
今回用意したS-RAMは速度やロットを全て統一しましたから、前よりは安定するはずです。そして交換後に
起動してみると、バグりは無くなり背景の星も流れます。やった!直った!とその時は思いましたが・・・。
次の日の朝、電源を入れてみるとカウントダウンからバグっています。カウントダウンだけのバグりで
ゲーム画面はいいのでは?と思いましたが、写真の通りゲーム画面も同じ様にバグっています。
また再調査です。ここで考えて見ますと、昨日は問題ありませんでした。昨日と今現在の違いは、今は
冬の朝で暖房も入っておらず、冷え込んでいると言うことです。(室内温度は0度近く)そこでエアコンの
スイッチを入れ、下基板をほんの1分程度暖めてから起動しました。するとバグりません。明らかにどこ
かのICが弱っています。IC基板の故障箇所を調べるのに急冷スプレーと言う物を使う事がありますが
それを天然でやっていた事になります。
主催者は急冷スプレーは持っていないので、逆にスポットヒーターを動作中の基板に当て、改善する
事で故障箇所を探す事にしました。結果はすぐ出ました。下の写真のIC(LS157)です。
動作中の基板にスポットヒーターの温風をそっと当てると、1秒ほどでバグりがすっと消えます。
このICを交換するとキレイにバグりは消えました。やった!直った!とその時は思いました。
しかし、それから一週間後、5~6時間エージングを行うと・・・。なんじゃコラッ!!!また逆戻り?
またまた再調査です。しかし今回の不具合は神出鬼没です。最初何も出ていかったのが暫く
したら出ていたり、最初出ていたのが暫くしたら消えていたり。調査した結果は、下の写真の
やつ(真ん中のLS157)が弱っている様でした。また157かよっ!
LS157を変えました。スコア表示のバグりは消えました。その内全部交換する事になるのか??
とりあえず今のところは直っているからいい様なものの、貴重な基板になにすんだっ!と言う感じはし
ます。下基板は最悪の場合、他のゲームから流用できるので、とりあえず手をかけて見たと言うところ
です。それにこの様に時間や温度で再現する不具合は修理に出しても”古い基板はそんなものです”
と言われて対応してもらえない可能性もありますから(経験あり)、これで良かったのかも知れません。
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